12月に入り寒さが本格的になってきました。

このところ少し衰えが感じられるようになった母。
先日、親族に不幸があったのでそのことを母に伝えると、「久しぶりに田舎に帰りたい」とめずらしく口にしました。親族の皆さんに久しぶりに会いたいと思ったようです。

雪の多い地方のため、若いころの母は冬に故郷に帰ろうとは全くしませんでした。雪の多いことが嫌だったのは、上京した理由のひとつだったようです。

それでも、年を重ねると自分の子供時代の風景や空気が懐かしくなるものなのでしょう。母の願いをかなえようと、本格的な冬が始まる直前のこの時期に、兄と協力して母の郷里に訪問することになりました。兄や私も小学生時代は毎夏、母の実家に残る叔父の家族とともに過ごすのが恒例でした。

どこまでも続く田んぼ。イナゴやホタルを追いかけ、草や土の香りが思い出と一緒に深く記憶に残っています。

母も記憶の底にある昔の思い出を、じっと思い出している様子でした。
若いときは忙しさで忘れていた何か大切なことを、90歳を迎えようとする今、郷里に帰り、その空気や風景の中で感じたいことがあったのかもしれません。

雪が降ろうとする直前のこの時期には珍しく、訪問中はまぶしいほどの青空に。
心の故郷はいま目の前にあることを、母がかみしめていたように思いました。

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